2014/10/23

夢見るフランス絵画展 概要・出品作品リスト

Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「夢見るフランス絵画展」へ行ってきました。この展覧会はある日本人収集家のコレクションから71点を選んで構成されています。個人コレクションなので、普段は公開されることがありません。素晴らしい作品が揃っていて、どうやってこれだけの名品を収集したのかと感嘆させられました。中でも注目すべきはピエール=オーギュスト・ルノワールの大型の作品《アンリ・ベルンシュタインの肖像》です。これはルノワールの代表作の一つと言えると思います。

概要
Bunkamura25周年記念
夢見るフランス絵画 印象派からエコール・ド・パリへ

開催期間
2014/10/18(土)-12/14(日)
*11/4(火)のみ休館

開館時間
10:00-19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)

会場
Bunkamuraザ・ミュージアム

出品リスト
ホームページに出品作品リストが掲載されていません。見辛いかも知れませんが、リストの画像をここに置いておきます。読めない何書いてあるのか分からないなどありましたら、コメントからお気軽にお問い合わせ下さい。


2014/10/22

チューリヒ美術館展のチラシが優秀すぎる

国立新美術館で開催されているチューリヒ美術館展。出品作品が74点とコンパクトなようでいて、そのどれもが傑作です。「見所は?」と聞かれたら、「出ている作品全て」としか言いようのない内容の濃すぎる展覧会です。

展覧会のリーフレットをふと見返して、その優秀さにひっくり返りそうになりました。このA4の印刷物にひと目で展覧会の様子が分かりやすく示されているのです。デザインされたのは白井敬尚さん。→Wikipedia白井敬尚

(上)チューリヒ美術館展のチラシ

この展覧会ではモネ、シャガール、ゴッホ、ピカソ、ダリ、ムンク、セザンヌ、クレー、カディンスキー、モンドリアン、ドガ、ジャコメッティ、ベックマン、キリコ、ゴーギャン…ああ、書ききれない。これらの巨匠たちの代表作というべき作品が74出品されています。それを特定の芸術家の部屋や様式の部屋などおおまかに時代順に13に区切って構成しています。そのため見ていてとてもわかりやすいのですが、これをブログで紹介しようにも巨匠の名作揃いでポイントが絞りにくくて文章にしにくいのです。

それは大いに力量不足からくるものではありますが、展覧会を見て、それを文章にしようとして挫折して、改めてこのチラシをみて、視覚的に一発で伝わるわかりやすさ、この機能的な美しさに気づきました。インパクトのある書体で芸術家の名前が示され、その横に作品の写真、それらが大小リズムよく配置されていて、格好いいだけじゃなくて分かりやすいってすごい(私が撮ったリーフレットの画質が悪くて申し訳ない)

この良さはタイポグラフィを勉強した人やグラフィックデザインを勉強した人には強烈に伝わっているんでしょうね。


広げるとこうなります。(それにしても暗く写ってる)

白井敬尚さん
Wikipedia白井敬尚
インタビュー:CREATOR'S FILE#1(PDFファイル)
インタビュー:CREATOR'S FILE#2(PDFファイル)
Twitterアカウン@yskeisei

そう言えば、展覧会オリジナルクッキーも話題になりましたね→IRORIO

2014/10/17

学校教育におけるミレーの真実 ー「農民画家」ミレーの真実を読んで

出井洋一郎先生の著書『「農民画家」ミレーの真実』(NHK出版新書)をやっと読みました。

ミレーは美術史の中で燦然と輝く巨匠のひとり…大学に入るまではそう思っていました。ところが、西洋美術史の先生は授業の中で「ミレーはバルビゾン派の画家の一人です」とさらっと紹介したのみ。仏文学の先生に至っては「フランス人はミレーをあまり知らないんですよ。日本人は好きですよねぇ。白樺派あたりの人が好んで、それが続いているんでしょうね。」「ええ、フランス人はミレーが嫌いというより、そもそも知られていない。専門家以外には非常に知名度の低い画家なんです。」とまでおっしゃるのです。

小学校の時に、担任の先生がミレーの《落ち穂拾い》を熱心に解説して下さったのをよく覚えています。「農民が収穫を終えた畑で落ちた麦の穂を拾っています。この人達はわずかな落ち穂を拾わなければ飢えてしまうほど貧しいのです。一生懸命生きている姿は美しいですね。そしてこの人達のようにわずかな食糧も無駄にしてはいけません。大切なことを教えてくれる絵ですね。」と。芸術というより道徳的な観点からの話でした。

私は幼い頃から美術館や展覧会へ親に連れられてよく行きましたが、ミレーの絵画は人気が高く、大人たちがうっとりするように絵に見入っていたのをよく覚えています。他の絵の前を通りすぎても、ミレーの作品の前では立ち止まり、皆じっくり見るのです。

確かに日本人には愛されているミレーですが、大学でのアカデミックな美術教育ではほとんど顧みられることがないという落差に違和感を覚えたものです。その理由は日本でのミレーの受容プロセスにあることが、この本の第三章で明かされています。日本ではミレーが誤って解釈されーー誤ってというよりでっち上げに近いのですが、ミレー神話と呼ぶべきものが形成され、「清貧の農民画家ミレー」という虚像が作り上げられました。

西洋美術史は今も昔もフランス中心で、西洋美術史の大きな流れの中でミレーはバルビゾン派の重鎮の一人とという程度の認識ですから、教授が当時そのような授業を行ったのは当たり前といえは当たり前のことでした。

アメリカではミレーの生前から大変人気が高く、現在も熱心に研究が続けられています。日本でも著者の出井先生をはじめとして、地道な研究がなされています。こうした潮流がフランスにおけるミレー評価に一石を投じることになるかもしれません。

写真 ピカソ美術館(パリ)リニューアルオープン

Dramatic Sky Over Hotel Salé HDR
photo by David Giral

パリのピカソ美術館が修復を終え、2014年10月25日ピカソの誕生日に合わせてリニューアルオープンする。その内部が公開された。the guardianに掲載された内部写真 修復が遅延し、5年の歳月を経てのリニューアルオープンとなった。

オンラインチケットおよび予約も再開されている こちら(言語切替あり)
10月25、26日は無料公開日となっている。

2014/10/16

【こどもとアート】ユートピアを求めて 世田谷美術館

現在、世田谷美術館で開催中のロシア革命期のポスター芸術を紹介する展覧会です。これは決してこども向けの展覧会ではないのですが、体験コーナーやバッジ制作イベントがあるなど、こどもでも楽しめる要素があります。

ユートピアを求めて
ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム

会期*2014年9月30日(火)-11月24日(月・休)
場所*世田谷美術館 1階展示室

BA-TUの創業者かつデザイナーの故・松本瑠樹さんのコレクションの中からロシア革命期の壁新聞、映画ポスター、政治ポスターが集められた展覧会です。展示品はメッセージ性が強く、視覚的に強力に訴えてくる作品揃いです。必ずしもこどもが好むような展覧会ではないのですが、世界的に見ても珍しいだけでなく内容の濃密なコレクションを小さな時に触れるのはとてもいい経験になるはずです。

展示室の中にアヴァンギャルドなはがきをデザインする体験コーナーが設けられいます。無地のはがきにキリル文字のシールを貼り付けるものです。親子で一緒に楽しめるとおもいます。また土曜日限定ですが、100円でモダニズム・カンバッヂを作れる展覧会の関連イベントも開催されています。詳しくはこちら



展覧会にあまり慣れていないお子さんが、今回の展覧会を楽しめるような工夫を少しご紹介します。

展示品は180もありますから、全てじっくり見ていたら疲れてしまって楽しめなくなるかもしれません。そこで「お気に入りの作品が見つかるかな?」とお子さんが作品に注意を向けられるようにしてみてください。「見てみて」と促すよりも自分から作品に向きあえます。

もしお子さんがあまり興味を示さなくても、鑑賞を無理強いしないで下さい。お子さんは今、その時に、たまたま興味が湧かないだけです。興味が無いのを発見できただけでもよしとして下さい。ここで無理強いしてしまうと、今後美術館やギャラリーに足を運ぶのを嫌がるようになるかもしれません。

お子さんが騒いだり興奮しすぎないようにお子さんの様子を気にかけて下さい。もしなだめても騒いでしまうようでしたら退出して下さい。他の方の迷惑になりますし、お子さん自身が「ここでは大きな声で騒いではいけない」と学ぶことができます。その時に、親は決してヒステリーを起こしてはいけません。何事もなかったようにすっと退出して下さい。

これはとても魅力的な展覧会なので、親だけが夢中になり過ぎないように注意して下さい。もっと楽しみたいと思ったら、お子さんを誰かに預けるか、夫婦や友人と交代でじっくり楽しむ工夫をして下さい。親子で美術館へ行くときは、あくまでもこどもが主役となるようにしてみてください。

今回の美術館では体験コーナーや関連イベントがありますので、ぜひこれらを利用して楽しい思い出を作ってみてください。世田谷美術館は砧公園内にありますので、鑑賞後は外へ出て思い切り遊んで下さい!

(今後もこどもが楽しめるような展覧会やイベントを見つけたら、ブログやTwitterで発信する予定です)

2014/10/13

東京国立博物館「日本国宝展」オンラインチケット

東京国立博物館日本国宝展」いよいよ10月15日(水)から始まります。入場券の購入方法はいくつかありますが、一番便利なのは展覧会公式ホームページで購入できるオンラインチケット(購入ページへのリンク)です。
ただし

A4サイズの用紙のプリントができること 
クレジットカード決済ができること

この2つの条件を満たしている必要があります。前売り券は10月14日(火)23:59までの販売です。もちろん展覧会が始まってからも、オンラインチケットは購入できます。

購入方法は至って簡単で購入ページへアクセスして次のような手順で購入できます。

  1. チケット購入ボタンをクリック
  2. チケット枚数を入力
  3. 選択中チケットと受取方法を確認して次へをクリック
  4. カード情報とお客さま情報を入力
  5. チケットを購入ボタンをクリック
  6. 印刷


こうして箇条書きにするとややこしそうですが、実際に購入手続きするととても簡単です。チケットを自宅で印刷するので、配送料も掛かりません。手数料も掛かりません。親切ですね。博物館のチケット売り場にも行列ができる事が予想されますので、事前にチケットを用意したほうが安心です。
注意事項があり、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末等の画面提示では入場できないそうです。

2014/10/11

混雑回避術 北斎ボストン美術館 浮世絵名品展

2014年9月13日から上野の森美術館で開催されている「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」、私は平日の午前と午後と2回行きましたが、大混雑していて2回ともリタイアして帰ってきました。どのような状態かというと、入り口から出口まで作品に沿って長蛇の列になっています。列が途切れることはほとんどありません。入り口から出口まで行列を作って鑑賞しなければならないような雰囲気です。じっくりと見たい作品の前で、一旦列から離れて列が途切れるのを待って近づいて見ようとしても、「横入り」という感じで白眼視されます。どんなに混んでいる展覧会でも平日にこれほどの行列になるのは珍しいのではないでしょうか。

知人数名と情報交換したところ、やや空いている時間帯を教えてもらいました。


開館と同時に入館する→すかさず2階の展示室から回る

上野の森美術館の開館時間は午前10時です。開館して間もなく入り口付近から混み合います。そこで1階展示室は一旦通りすぎて2階展示室から先に鑑賞すると、少なくとも2階は比較的ゆったりと見られるようです。順路通りにすすまなくていいの?と思うかもしれませんが、上野の森美術館に確認したところ、順路は設定していないとのことです。またこのように展示順に進まなくてもルール違反、マナー違反にはあたらないので、自由に鑑賞して下さいとのことでした。

金曜日の夜に行く

上野の森美術館の閉館時間は午後5時ですが、金曜日のみ午後8時まで開館しています。入館は閉館時間の30分前までです。金曜日の夜はやや混雑が緩和しているとのことです。でも残念ながら快適と言えるほど空いている訳ではなさそうです。

展覧会特設ページを確認すると、関連番組放送の予定が掲載されていました。テレビで紹介されるといっそう混雑しそうですね。

【本展関連番組のお知らせ】
北斎に挑む~市川猿之助×浮世絵職人~
本展の展覧会ナビゲーターを務める市川猿之助氏が、
江戸時代からの技を受け継ぐ浮世絵職人と出会い、
浮世絵制作を体験します。

10月13日(月・祝)12:30〜13:00 テレビ東京
再放送
10月15日(水)23:30〜24:00 BSジャパン
10月19日(日)10:30〜11:00 BSジャパン
出典*北斎展特設ページ


チューリヒ美術館展 出展全74作品リスト

チューリヒ美術館展では74作品が展示されています。Twitterにはアップしていたのですが、チューリヒ美術館展の作品リスト画像を置いておきます。現在までのところ、国立新美術館ホームページチューリヒ美術館展特設ホームページのどちらを探しても、全ての出展作品のリストが見当たらないので、参考になればと思います。

チューリヒ美術館展
ー印象派からシュルレアリスムまで
出品作品リスト

リスト番号01〜18


リスト番号19〜41



リスト番号42〜65



リスト番号66〜74



混雑時の国立新美術館 (オルセー美術館展とチューリヒ美術館展)

国立新美術館では10月20日までオルセー美術館展とチューリヒ美術館展の開催期間が重なっています。明日から連休が始まることもあり一層の混雑が予想されます。国立新美術館で少しでも快適に過ごす工夫をいくつか紹介します。

飲み物を持参する

混雑時は館内のカフェも大行列ができています。また、館内には自販機も設置されていません。喉も乾きやすいので、飲み物は持参したほうが安心です。飲む時は飲食可のスペースか確認して下さい。
※展示室内は作品保護のため、作品に優しく人間に厳しい環境です。温度は低めに設定されており、空気は乾燥しています。

ロッカーを使う

国立新美術館のコインロッカーは他の美術館に比べてとても数が多いので、混雑時でも空きがあります。大きな荷物を持って展示室に入る方はいないでしょうが、普段持ち歩いている荷物でも貴重品以外は預けて展示室に入ったほうが作品に集中しやすいですし、何より疲れにくいです。(ロッカーはコインリターン式です)

トイレ

1階の逆円錐型の中にあるトイレは混雑しやすいです。入り口から見て右端と左端にあるトイレは個室も多く比較的空いています、こちらの利用を薦めます。



他に台風が近づいているようなので、天気が荒れるようなら美術館に直結している乃木坂駅を利用したほうが良いかもしれないですね。

2014/10/09

オルセー美術館展・チューリヒ美術館展が現在同時開催

現在、国立新美術館ではオルセー美術館展チューリヒ美術館展が両方開催されています。もうすぐ終わるオルセー美術館展と始まったばかりのチューリヒ美術館展、どちらも大きな企画展ですが、これを一度に(といってもチケットはそれぞれ必要)みられるのはかなり貴重な機会です。

オルセー美術館展・チューリヒ美術館展 開催重複期間 
2014年9月25日(木)から10月20日(月)

特別割引
この期間にオルセー美術館展の半券を窓口で提示すれば、チューリヒ美術館展の当日チケットが100円引きになるサービスがあります。オルセー美術館展とチューリヒ美術館展のチケット窓口はそれぞれ別です。

閉場時間
上記期間内で閉館時間が異なる日があるので注意が必要です。通常、国立新美術館の閉館時間は午後6時(金曜日は午後8時)までですが、オルセー美術館展は開期末が近くなり閉場時間を延長しています。毎週土曜日と10月12日(日)以降の毎日はオルセー美術館展のみ閉場時間が午後8時です。また、火曜日は休館日です。詳しくは国立新美術館に問い合わせてください。

2014/10/07

フェルディナント・ホドラー展 開催概要

フェルディナント・ホドラー展 開催概要

日本・スイス国交樹立150周年記念 フェルディナント・ホドラー展
会期:
2014年10月7日(火)~2015年1月12日(月・祝)
開館時間:
午前9時30分~午後5時30分
毎週金曜日:午前9時30分~午後8時
※入館は閉館の30分前まで
※上野公園での「創エネ・あかりパーク(R)2014」 開催にあわせ、11月1日(土)、2日(日)は午後8時まで開館します(入館は閉館の30分前まで)。
休館日:
月曜日(ただし、10月13日、11月3日、11月24日、1月12日は開館、翌火曜日休館)、12月28日~1月1日
主催:
国立西洋美術館、NHK、NHKプロモーション
共同企画:
ベルン美術館
後援:
外務省、スイス大使館
特別協力:
ジュネーヴ美術・歴史博物館
協賛:
スイス・リー・グループ、大日本印刷、中外製薬
助成:
スイス・プロヘルヴェティア文化財団
協力:
スイス政府観光局、スイス インターナショナル エアラインズ、ネスレ日本、ルフトハンザ カーゴAG、ユングフラウ鉄道グループ、西洋美術振興財団
観覧料金:
当日:一般1,600円、大学生1,200円、高校生800円
前売/団体:一般1,400円、大学生1,000円、高校生600円
※前売券は2014年10月6日(月)まで販売。
ただし、国立西洋美術館では10月5日(日)まで販売。
前売券の販売場所はこちらでご確認ください。
※10月7日(火)からは当日券販売。
※団体料金は20名以上。
※中学生以下は無料。
※心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)。
巡回:兵庫県立美術館
2015年1月24日(土)~4月5日(日)

フェルディナント・ホドラー(1853-1918)は、19世紀末から20世紀初頭のスイスを代表する画家です。パウル・クレーやアルベルト・ジャコメッティといった後続するスイス人芸術家とは異なり、ホドラーは生涯をつうじて母国にとどまりました。大規模な室内装飾を数多く手がけ、身近なアルプスの風景を描きつづけた彼は、スイスではいまなお「国民画家」と呼ばれています。最近では、フランスやアメリカでも相ついで個展が行なわれるなど、その存在にはあらためて国際的な注目が集まっています。
19世紀半ばにスイスの首都ベルンの貧しい家庭に生まれ、若くして肉親や兄弟を失ったホドラーは、やがてジュネーヴに移って本格的に画家の道を歩みはじめます。その前半期の絵画には、とくに「死」や「憂鬱」のイメージがまとわりついており、そこにこの画家の不幸な生い立ちを読みとろうとする人々も少なくありません。けれども、ちょうど新しい世紀、20世紀への転換期を境に、ホドラーは「死」よりも「生」の絵画に目醒めます。――踊る人々の姿、そこに身体化される感情、それらが連鎖することで生まれるリズム。さらに、アルプスの山々や雲のような自然界の無機物にさえ、彼は生命感や律動感を見出しました。「パラレリズム」(平行主義)という独自の美術理論を提唱したこの画家は、ただ眼に映る対象よりも、それらをつくり出す構造や原理にこだわり、ゆえに単なる再現的なイメージを超えた、世界の動的な秩序やリズムの抽出に向かったのです。
たとえばヴァシリー・カンディンスキーは、絵画史における「メロディックな構図」から「リズミックな構図」への転換の契機をもたらした画家として、ポール・セザンヌとともにホドラーの名を挙げています。本展では、ホドラーの画業を丹念に跡づけると同時に、まさに絵画の「リズム」をテーマとしながら、その芸術をあらたに読み解きます。同時代に台頭しつつあったモダン・ダンスの思想とも共鳴するホドラーの絵画を前にすれば、わたしたちはそこにある「リズム」を、じかに体感することができるはずです。
本展は、こうしたテーマのもと、ベルン美術館をはじめとするスイスの主要美術館と個人が所蔵する油彩・素描など約100点によって、ホドラー芸術の全貌に迫ります。日本ではおよそ40年ぶりとなる国内最大規模の回顧展です。この画家をすでに知るかたも、そうでないかたも、ホドラーとのあらたな出逢いを、どうかご期待ください。

チューリヒ美術館展@国立新美術館リンク集

国立新美術館で開催中のチューリヒ美術館展に関係するリンク集。
同展覧会をより楽しむための参考資料のつもり。

チューリヒ美術館展―印象派からシュルレアリスムまでー

展覧会関係
チューリヒ美術館

チューリヒ美術館展 開催概要

チューリヒ美術館展―印象派からシュルレアリスムまで


展覧会概要

スイスが誇る美の殿堂チューリヒ美術館のコレクションを、日本で初めてまとめて紹介します。出品されるのは幅6メートルにおよぶモネの大作やシャガールの代表作6点に加え、ホドラーやクレーといったスイスを代表する作家の珠玉の絵画、さらにはマティス、ピカソ、ミロといった20世紀美術の巨匠の作品など、 これまでなかなか来日の実現しなかった印象派からシュルレアリスムまでの傑作70点以上。スケッチや習作がほとんどない、まさに「すべてが代表作」といえるラインアップです。
世界的な金融都市でもあるチューリヒの富と、スイスの人々の美への慧眼を象徴するようなチューリヒ美術館展は、日本とスイスの国交樹立150年を記念する展覧会でもあります。この秋、必見の展覧会です。

チューリヒ美術館とは

スイスを代表する美術館のひとつで、中世美術から現代アートまで10万点以上の作品を所蔵しています。特に19世紀の印象派以降の近現代美術コレクションの素晴らしさで知られ、スイス出身のホドラーやジャコメッティのコレクションは世界屈指の規模を誇ります。18世紀末にチューリヒの町の芸術家や鑑定家たちが立ち上げた小さな集まりに端を発し、1910年に建物が落成したチューリヒ美術館の運営は、今日でも市とともに、2万人のチューリヒ芸術協会の会員に支えられています。2017年には新館を完成させて、スイス最大の美術館となる予定です。

会期
2014年9月25日(木)~12月15日(月)
毎週火曜日休館 ただし、10月14日(火)は開館
開館時間
10:00~18:00 金曜日は20:00まで
入場は閉館の30分前まで
会場
国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
主催
国立新美術館、朝日新聞社、テレビ朝日、BS朝日
後援
外務省、スイス大使館
協賛
三井物産、トヨタ自動車、大和ハウス工業、大日本印刷、チューリッヒ保険、チューリッヒ生命
協力
スイス政府観光局、チューリヒ観光局、スイス インターナショナル エアラインズ、ルフトハンザ ドイツ航空、
ルフトハンザ カーゴ AG、アクティオ
観覧料(税込)
当日
1,600円(一般) 1,200円(大学生) 800円(高校生)
巡回情報
2015年1月31日(土)― 5月10日(日) 神戸市立博物館
お問合せ
ハローダイヤル 03-5777-8600

国立新美術館