現在、目黒区美術館で所蔵作品展「フジタのいる街角 巴里の誘惑、1910〜30年代」が開催されています。概要はこちらでご紹介しています。
フランスで最も評価を受けた日本人画家、藤田嗣治(レオナール・フジタ)の作品を中心として、藤田嗣治の渡仏以前の画家、同じように渡仏し様々な展開を見せた画家たちの作品と3つの展示エリアから構成されています。
展示構成
第一章 藤田嗣治以前のパリの日本人画家たち
第二章 藤田嗣治と周辺の日本人画家たち
第三章 パリの日本人画家たち 1920〜30年代
第一章 藤田嗣治以前のパリの日本人画家たち
藤田嗣治よりも早くパリに渡っていた日本人画家の作品が展示されています。第一章では満谷国四郎、鹿子木孟郎、安井曾太郎、梅原龍三郎らによるパリ、フランスの風景を描いた作品が並びます。それらを通して当時の時代の息吹を感じることができます。
安井曾太郎《巴里の公園》1911年
油彩・キャンバス/目黒区美術館蔵
第二章 藤田嗣治と周辺の日本人画家たち
この展示室には藤田とも個人的な親交があり、その作品をこよなく愛したGHQの民政官フランク・シャーマンが蒐集したコレクションほかから17点ほど展示されています。藤田嗣治が渡仏した1913年以降の作品を中心に、藤田の周辺の画家として高野三三男、小柳正、板東敏雄、岡鹿之助らの作品も同時に取り上げられています。
まず目を引くのが1920年代に一世を風靡した藤田の「乳白色の肌」以前の作品群です。《赤毛の女》はフォーヴィスムの色彩とキュビスムを思わせる大胆な構図が印象的な渡仏後間もない頃の作品です。《十人の子どもたち》では人種も多様な子どもたちが十人描かれていますが、その後に藤田がよく描いた子供は額が大きく唇をきゅっと結んだ顔立であるのに対し、この《十人の子どもたち》にはまだその特徴を見て取ることはできません。金箔を貼った《鶴》、鳥獣戯画を思わせる《動物群》など日本の伝統的な画題を描いた作品も展示されています。その他、藤田が手がけた挿絵本や自ら精緻な象嵌細工を施したテーブルなど、あまり知られていない藤田の横顔を見ることもできます。
高野三三男《ヴァイオリンのある静物(コンポジション)》1937年頃
油彩・キャンバス/目黒区美術館蔵
第三章 パリの日本人画家たち 1920〜30年代
画家たちは留学を通して西洋絵画の基礎的な技術を習得し、美術館で古典を学ぶだけではなく、同時代の絵画に関心を持ち新たに自分の様式を確立していきます。
第三章では長谷川潔、中村義夫、岡鹿之助、荻須高徳、猪熊弦一郎らの作品が展示されています。伊原宇三郎の作品はこの《カナペの女》と代表作である《室内群像》の下絵を見ることができます。
伊原宇三郎《カナペの女》1926年
油彩・キャンバス/目黒区美術館蔵
坂田一男の《浴室の二人の女》では、当時の絵画の動向に深く関わりを持ちつつ、キュビスムの運動に直接関わりを持ったことも垣間見ることができます。
坂田一男《浴室の二人の女》1928年
油彩・キャンバス/目黒区美術館蔵
周辺資料
目黒区美術館にはデッサンや習作だけではなく、画家が持ち帰った地図やチケット類、デパートのカタログ、煙草のパッケージなどの印刷物が多く展示されています。中には伊原宇三郎のルーヴル美術館での模写の許可証などもあります。絵画作品だけでなく、こうした周辺資料からも画家から見た当時のパリの様子を窺い知ることができます。
パリ市内地図「Monumental et Metropolitan」
1924年頃/目黒区美術館(寄託)
さまざまなチケット類
1920年代後半/目黒区美術館(寄託)
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