2014/11/21

目黒区美術館「フジタのいる街角 巴里の誘惑、1910〜30年代」レビュー

現在、目黒区美術館で所蔵作品展「フジタのいる街角  巴里の誘惑、1910〜30年代」が開催されています。概要はこちらでご紹介しています。

フランスで最も評価を受けた日本人画家、藤田嗣治(レオナール・フジタ)の作品を中心として、藤田嗣治の渡仏以前の画家、同じように渡仏し様々な展開を見せた画家たちの作品と3つの展示エリアから構成されています。

展示構成
第一章 藤田嗣治以前のパリの日本人画家たち
第二章 藤田嗣治と周辺の日本人画家たち
第三章 パリの日本人画家たち 1920〜30年代


第一章 藤田嗣治以前のパリの日本人画家たち
藤田嗣治よりも早くパリに渡っていた日本人画家の作品が展示されています。第一章では満谷国四郎、鹿子木孟郎、安井曾太郎、梅原龍三郎らによるパリ、フランスの風景を描いた作品が並びます。それらを通して当時の時代の息吹を感じることができます。


安井曾太郎《巴里の公園》1911年
油彩・キャンバス/目黒区美術館蔵


澤部清五郎《ムードンの画室街》1913年
油彩・ボード/目黒区美術館蔵


第二章 藤田嗣治と周辺の日本人画家たち
この展示室には藤田とも個人的な親交があり、その作品をこよなく愛したGHQの民政官フランク・シャーマンが蒐集したコレクションほかから17点ほど展示されています。藤田嗣治が渡仏した1913年以降の作品を中心に、藤田の周辺の画家として高野三三男、小柳正、板東敏雄、岡鹿之助らの作品も同時に取り上げられています。

まず目を引くのが1920年代に一世を風靡した藤田の「乳白色の肌」以前の作品群です。《赤毛の女》はフォーヴィスムの色彩とキュビスムを思わせる大胆な構図が印象的な渡仏後間もない頃の作品です。《十人の子どもたち》では人種も多様な子どもたちが十人描かれていますが、その後に藤田がよく描いた子供は額が大きく唇をきゅっと結んだ顔立であるのに対し、この《十人の子どもたち》にはまだその特徴を見て取ることはできません。金箔を貼った《鶴》、鳥獣戯画を思わせる《動物群》など日本の伝統的な画題を描いた作品も展示されています。その他、藤田が手がけた挿絵本や自ら精緻な象嵌細工を施したテーブルなど、あまり知られていない藤田の横顔を見ることもできます。


高野三三男《ヴァイオリンのある静物(コンポジション)》1937年頃
油彩・キャンバス/目黒区美術館蔵



第三章 パリの日本人画家たち 1920〜30年代
画家たちは留学を通して西洋絵画の基礎的な技術を習得し、美術館で古典を学ぶだけではなく、同時代の絵画に関心を持ち新たに自分の様式を確立していきます。
第三章では長谷川潔、中村義夫、岡鹿之助、荻須高徳、猪熊弦一郎らの作品が展示されています。伊原宇三郎の作品はこの《カナペの女》と代表作である《室内群像》の下絵を見ることができます。


伊原宇三郎《カナペの女》1926年
油彩・キャンバス/目黒区美術館蔵





坂田一男の《浴室の二人の女》では、当時の絵画の動向に深く関わりを持ちつつ、キュビスムの運動に直接関わりを持ったことも垣間見ることができます。


坂田一男《浴室の二人の女》1928年
油彩・キャンバス/目黒区美術館蔵


周辺資料
目黒区美術館にはデッサンや習作だけではなく、画家が持ち帰った地図やチケット類、デパートのカタログ、煙草のパッケージなどの印刷物が多く展示されています。中には伊原宇三郎のルーヴル美術館での模写の許可証などもあります。絵画作品だけでなく、こうした周辺資料からも画家から見た当時のパリの様子を窺い知ることができます。












パリ市内地図「Monumental et Metropolitan」
1924年頃/目黒区美術館(寄託)











さまざまなチケット類
1920年代後半/目黒区美術館(寄託)



2014/11/20

「フジタのいる街角」 巴里の誘惑、1910〜30年代 

現在、目黒区美術では「フジタのいる街角 ー巴里の誘惑、1910〜30年代」が開催されています。これは二部に分けて開催される「ふたつの時代 ー所蔵品でたどるパリの日本人」展の第一部にあたります。目黒区美術館は「海外で学んだ画家たちとその作品」を方針として作品を収集している美術館ですが、常設展示室を持たないため、今回のような所蔵品展でなければ収蔵品を見ることができません。今回は藤田嗣治(レオナール・フジタ)を中心に川村清雄、梅原龍三郎、岡鹿之助、安井曾太郎、澤部清五郎、鹿子木孟郎、高野三三男、伊原宇三郎、坂田一男ら1910年頃から1940年頃までにパリで研鑽を積んだ日本人画家の作品が展示されています。

展覧会の構成
第一章 藤田嗣治以前のパリの日本人画家たち
第二章 藤田嗣治と周辺の日本人画家たち
第三章 パリの日本人画家たち 1920〜30年代

会 期
2014年10月25日(土)〜2014年12月7日(日)

時 間
10:00~18:00(入館は17:30まで)

休館日
月曜日 ただし、11月3日(月曜日)及び11月24日(月曜日)は開館し、11月4日(火曜日)及び11月25日(火曜日)は休館。

観覧料
一 般 500円(400円)
大高生・65歳以上 400円(300円)
小中生 無料

主催 公益財団法人 目黒区芸術文化振興財団 目黒区美術館

地 図(ここにはGoogle Mapsを貼り付ける予定です)


なお「ふたつの時代 ー所蔵品でたどるパリの日本人」展の第二部「戦後世代の横顔 ーパリの革新、1950〜60年代」は2015年2月14日〜3月22日に開催されます。

2014/11/05

中村屋サロン美術館  美術館概要

10月29日に新宿中村屋ビルがリニューアルオープンし、3階に中村屋サロン美術館が開設されました。多目的スペースが一室、展示室が一室の小さな美術館ですが、芸術家たちの交流の場であった中村屋サロンゆかりの品々が展示されています。

入口付近の様子






館長挨拶によると
中村屋の創業者 相馬愛蔵・黒光夫妻は芸術・文化に深い理解を示し、愛蔵と同郷の彫刻家 荻原守衛(碌山)や荻原を慕う若き芸術家などを支援しました。彼らは中村屋を舞台に切磋琢磨することでそれぞれの才能を開花させます。その様子は後にヨーロッパのサロンに例えられ、「中村屋サロン」として日本近代美術史にその名を刻むとともに、中村屋に芸術・文化の薫りを添えました。
まさに中村屋”サロン”美術館です


中村屋サロン美術館 利用案内

住所
〒160-0022
東京都新宿区新宿3丁目26番13号
新宿中村屋ビル3階

開館時間
10:30~19:00
(入館は18:30まで)
休館日毎週火曜日、1月1日
(火曜が祝祭日の場合は開館、翌日休館)

アクセス
JR線 新宿駅東口から徒歩2分
東京メトロ丸の内線 新宿駅A6出口直結

地図

2014/10/23

夢見るフランス絵画展 概要・出品作品リスト

Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「夢見るフランス絵画展」へ行ってきました。この展覧会はある日本人収集家のコレクションから71点を選んで構成されています。個人コレクションなので、普段は公開されることがありません。素晴らしい作品が揃っていて、どうやってこれだけの名品を収集したのかと感嘆させられました。中でも注目すべきはピエール=オーギュスト・ルノワールの大型の作品《アンリ・ベルンシュタインの肖像》です。これはルノワールの代表作の一つと言えると思います。

概要
Bunkamura25周年記念
夢見るフランス絵画 印象派からエコール・ド・パリへ

開催期間
2014/10/18(土)-12/14(日)
*11/4(火)のみ休館

開館時間
10:00-19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)

会場
Bunkamuraザ・ミュージアム

出品リスト
ホームページに出品作品リストが掲載されていません。見辛いかも知れませんが、リストの画像をここに置いておきます。読めない何書いてあるのか分からないなどありましたら、コメントからお気軽にお問い合わせ下さい。